After the Pleistocene

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ドナルド・キーン「日本人の戦争」

JUGEMテーマ:読書


 先月亡くなったドナルド・キーンさんは、若い時軍人として太平洋戦争において日本人の捕虜の通訳として働いたキャリアーがある。日本人の捕虜はたとえ最初多少の抵抗があろうと、すぐにその持っている機密を全て吐き出すと言う。『生きて虜囚の辱めを受けず』の戦陣訓が利きすぎたせいと思うが、訊かれもしないのになんでもバラしてしまうのは日本軍としては誠に困ったものである。それにしても劣悪な環境、暴力と絶対服従が支配する今までの生活から、捕虜となってからのこの安心した生活への変化は、もう死ぬのが当たり前だった身にはなにもかもさらけ出さないではいられない衝動を捕虜たちに与えたのだろう。後に作家となった海軍軍人豊田穣もその一人だが、私もキーンさんの優しい心に触れたなら、やはりあっさり白状したに違いない。
   米英を屠るとき来てあなすがし 四天一時に雲はれにけり    齋藤瀏(元陸軍少将、歌人斎藤史の父)
 昭和16年12月8日、日本海軍が真珠湾を急襲して大戦果を得たとき、ほとんどの日本人は歓声を上げてこれを祝したであろう。いままで覆われてきた西洋諸国の圧力をわが大和民族がようやくはね返したと。しかし戦局は間もなく暗転、やがて戦火が日本本土のわが身にも及ぶようになってくる。  
『作家の日記を読む』の副題を付けたこの本『日本人の戦争』は、永井荷風や清沢冽のようなこの戦争に批判的な人物の日記も取り上げているが、興味をそそるのは世の流れに流されてゆく高見順や伊藤整、山田風太郎の日記に込められた非常に大勢の日本人の声だろう。緒戦に挙げた歓声を忘れたわけではない、だが手酷い敗戦に打ちのめされてなるべくなら忘れてしまいたいはずの記憶。キーンさんの筆致は世の動きに流されたこれらの人々に、平然とそれを受け止めた人々と同様の温かいまなざしを注いでいる。その優しさは味わい深い。
 
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