この作品は今年のアカデミー賞をいろいろ得ているが、私の基準から見るとそれほど優れた作品とは思えないのだが・・・不出来という評価ではないが、この程度のストーリー、役者、ダンス、歌、衣装、舞台装置などなどで、ミュージカルのベストとは言い難い。
ハリウッドやブロードウェーの下積みからトップにのし上がる物語は、「コーラスライン」があるし、よくあるストーリー展開。歌やダンスでは「ウエストサイド物語」や「キャバレー」には敵わないし、時代背景が解からず、出演者の衣装がとても陳腐なのには驚いた。ジャズがロックに押されていると主人公のピアニスト、セバスチャン(ライアン・ゴズリング)は弱々しく言うが、映画「セッション」(監督は同じデミアン・チャゼル)並みの熱い演奏が聴けたわけではない。勿論ジャズへの鎮魂歌でもない。セバスチャンがいつもくたびれているように見える(若さがない)のはこちらの思い過ごしか?
女主人公ミア(エマ・ストーン)が最後のオーデションで自分の思いを歌い始める場面が印象に残った。最後の章と思われる場面、観客の予想とガラリと変わった主人公二人の人生展開がおもしろかったが、残念ながら強く余韻を残すほどのものではなかった。思い出すわが青春のミュージカル映画では、「回転木馬」や「南太平洋」は夢を歌い上げてくれたし、「ムーラン・ルージュ」「マイ・フェア・レディ」や「オペラ座の怪人」は実に楽しかった。どこかで再上映してないかなあ。