After the Pleistocene

A memory of my ramble
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司修 「孫文の机」
 この本のカバーになった薄暗い写真は、乱雑な書斎の机の前に若い人物がこちらを向いて座っている構図。この人物は革命家の孫文ではない。著者の司修でもなさそう。しかしこの写真の謎を解き明かすことがこの本の主題ではなさそうだ。これは小説でもない。純粋に評論でもなく随想に近いものだが、後半著者本人が出てくるのに、その口から何らかの感想が述べられることはなく、参考文献を張り付けた評伝風な解説をつけているのが気に食わない。
 栃木県下都賀郡の谷中村出身の大野家の三兄弟、和田日出吉(記者)、逸見猶吉(詩人)、大野五郎(画家)の生涯を追った昭和初期から戦後までの物語でもある。祖父大野孫右衛門と彼らの父親はかって廃村になった谷中村の村長を務めたが、足尾銅山鉱毒事件で財を成したという暗い影を背負っていた。
 次男日出吉は和田家に夫婦養子に入り、中外商業新報(現日本経済新聞)の敏腕記者で女優小暮実千代の夫。昭和11年の2・26事件の際は真っ先に首相官邸に入り、首謀者の一人栗原中尉に単独インタビュウしている。しかしそれは発表されることはなく、また直後戒厳令によって事件の全貌は国民には全く不明であった。(反乱部隊に踏み込まれた朝日新聞は別として、他の新聞社は5・15事件の時のように抵抗すべきであった。)四男の大野四郎、ペンネーム逸見猶吉は酒飲みで野獣派の詩人草野心平などの仲間、そして大野五郎はフォビズムの前衛画家でこれまた大酒飲み。国内で発言の場を封じられた和田日出吉が『満州新聞』に活路を見出したのは理解できるが、岸信介や鮎川義介、甘粕元憲兵隊長と「同じ穴の狢」となってしまったようだ。
 物語は「2・26事件」と「足尾鉱毒事件」と「満州国」とを絡めた三人の兄弟の足取りを描いているが、酔いつぶれた酒飲みの足取りのごとく行き先が定かではない。治安維持法で縛られた異端の芸術家たちが、どのようにして戦前戦中を過ごしたかは確かに興味のある問題ではあるが。
 ところで、2・26事件で処罰された皇道派がもし権力を握っていたなら、日中戦争は拡大しなかったし、太平洋戦争まで発展しなかったろうという説があるが、この説はだれか検証しているだろうか?
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